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Channel: むくどりを追いかけて☆サボテン・多肉・ブルーグラス日記
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リズムギターの達人 名盤 その2 ジョン・スターリング

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■ ジョン・スターリング


 リズムギタリストとして、ジョン・スターリングが公に文章になったり語られたことは過去にほとんど記憶にない。スターリングが語られるのはいつもヴォーカルだ。

 僕はスターリングのリズムギターが大好きだ。僕にとって、リズムギターベスト3のうちの一人だ。ブルーグラス・リズムギターの本筋からは外れているのだが、スターリングのギターがセルダムシーンのテイストを作っている。

 オリジナル・セルダムシーンは、「誰一人かけても成り立たない」といわれることがあるが、僕はヴォーカルのみならずスターリングのギターも欠くべからざるものだと思う。スターリングが抜けてフィル・ローゼンタルに代わると、まったくリズムのムードが変わってしまう。フィルはアフタービートを強調したリズムだ。

 スターリングは他にない独自のスタイルのギターと言っていいだろう。


 スターリングのギターが一番楽しめるのは、名盤 Live at Cellar Doorのアルバムだ。

 まず1曲目のDoing My TimeではキーCのこの曲をなんと8カポのEフォームでやっている。3弦の1フレットを押さえたり離したりで3度の音を隠し味のように使っている。そして、いわゆるズンチャカズンチャカのリズムとは異なるビートを入れてくる。

 2曲目のCalifornia Cotton Fieldsではスターリング独特のブラッシュアップが自身のヴォーカルの合間などで多用される。このブラッシュアップがスターリングのギターの最大の特徴の一つだ。City Of New Orleansなどでも歌の合間などで多用(ただしACTⅠの同曲ではまだ聞かれない)しているし、Dark Hollowのイントロではブラッシュアップから入ったりもしている。

 このブラッシュアップは、スタジオ録音ではACTⅡのGardens & Memoriesでおそらく初めて出現。ライブで多用するのは1974年ごろからだ。

 3曲目のPanhandle CountryはキーCのこの曲を5カポGで弾き、アクセントをつけたベースランを多用し盛り上げている。このアクセント、テイストはブルーグラスボーイズのギタリストのベースランのテイストとは異なり、スターリング独特だ。これがスターリングの最大の特徴の二つめ。

 Georgia Roseでは、僕の名づけるところの“スライディングGラン”が聞かれる。このスライディングGランは、スタジオ録音のPan AmericanMean Mother Bluesやほかの曲でも聞けるが、YouTubeなどの動画でスライディングGランを確認できていないので、真相は未だ謎だ。このスターリングのスライディングGランは70年代中ごろに多用していたようで、70年代も後半になるとあまり聞かれなくなる。


 ちなみに、Baby Blueで聞こえるリズムギターの音色が大好きだ。この曲ではダフィーがフィンガーピックで、スターリングはフラットピックで、二人がギターを弾いているのだが、この音色は、スターリングのギターなのか、ダフィーのギターなのかわからない。おそらく高音弦のカリッとした響きはダフィーのものなのだろう。低音弦のランニングなどはスターリングの音が聞こえているのだと思う。


 時期をさかのぼるが、ACTⅠではいわゆるブンチャカのブルーグラスリズムが基本だが、ACTⅡではLast Train From Poor Valleyでフォーク調のリズムギターを取り入れる。

 アルバムOld TrainでのWait A MinuteCeller DoorでのWhite Lineなどもブルーグラスとは言えないリズムだ。
 New Seldom SceneでのBig Rigでのイントロも、とんでもない発想のギターだ。

 Seldom Sceneの曲は、スターリングのギターで始まる曲が多い。列挙してみると・・

Raised By The Railroad Line

Want Of A woman

Last Train From Poor Valley

Keep Me From Blowing Away

Muddy Water

Old Train

White Line

・He Rode All The Way To Texas

・Big Rig

・California Earthquake・・・


推測するに、これらの曲はスターリングが曲を持ってきて、まずメンバーの前で「こんな曲どうや?」とギターで歌い始め、それに他のメンバーが音を加えていったのだと思う。

 よくSeldom Sceneのアレンジは「計算されつくしたアレンジ」といわれるが、実際は各メンバーが気分の赴くまま自然発生的に音をあてはめていったというのに近いのではないか、というのが僕の考え。もっともその「気分の赴くまま・・」というのが、各人のとびきりの音楽センスから発せられているのが我々凡人には及びもつかないところなのは言うまでもない。

 絶品のアレンジと思うOld Trainのイントロも、発生の瞬間を想像してみるのは楽しい。スターリングの列車の走る様子を模したギターに、まず最初に音を加えたのは、マイクの軽い警笛のような音かな。それにベンが車輪・ピストンの動く様子で音を埋め、トムが普通では考えつかないようなタイミングでオクターブの音を埋める。そしてヴォーカルに向かう時のトムの音の動きは圧巻だ!まるで機関車が目の前に近づいてくるようだ。ダフィーは「わしはまぁこんなもんでええやろ」とリズムを刻む。

 話がリズムギターからつい脱線してしまったが、このOld Trainのイントロの初めのギターも弾いてみると結構難しい。


 Youtubeでスターリングの手元を見てみると、こねるような右手の動きだ。でもスライドのような動きはあまりよくわからない。Mean mother BluesやCity Of New Orleansを歌っている映像も見たことがない。
ご存知の方があれば教えてください。

 楽器についても、情報がないのでよくわからない。写真から判断すると初期はD-28をつかっていたようだが、途中からD-41らしきものに変わり、その後ずっと現在に至るまで使っているようだ。70年代中ごろからか?


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